回生失効時への対処
主な電車のブレーキに、空気ブレーキと電気ブレーキがあります。
空気ブレーキは、空気圧によってブレーキシューを車輪に押し付けて、ブレーキ力を得るものです。
電気ブレーキは、モーターを発電機として利用して、ブレーキ力を得るものです。
電気ブレーキには、発生した電気を抵抗器で熱に換える、発電ブレーキと、架線に戻して他の電車に使ってもらう、回生ブレーキがあります。今では、エネルギーが節約できる回生ブレーキが主流です。
しかし、回生ブレーキは発生した電気を他の電車に使ってもらわなければ効かないので、地下鉄など列車密度の高い線区には向きますが、早朝・深夜や列車本数の少ない線区には向きません。
回生ブレーキが効かなくなる(これを失効するという)と、直ちに空気ブレーキに切り替わる仕組みになっていますが、それでも、切替時間のロスやブレーキ力不足により、停車位置を行き過ぎてしまうこともあります。
また、空気ブレーキの使用が増えると、ブレーキシューと車輪の磨耗が激しくなり、メンテナンスコストがかさみます。
そこで、抵抗器を併せ持って、回生ブレーキが失効すると、発電ブレーキに切り替える車両もあります。(例:JR東海313系)
南海電鉄では、高野線の山岳区間・準山岳区間で、列車本数が少なくなっている上、坂を下る列車は速度を抑えるために、連続して電気ブレーキをかけます。特に、山岳区間に直通する2000系は、回生ブレーキを備えているため、失効して空気ブレーキに切り替わると、長時間空気ブレーキをかけ続けることになります。空気ブレーキを長時間使用し続けると、摩擦によりブレーキシューと車輪の温度が上昇しブレーキ力が落ちるという現象が起こり、大変危険です。
そこで南海電鉄では、車両ではなく三日市町・御幸辻・下古沢・紀伊細川の各変電所に、電気を抵抗器で吸収する装置を設置して対応しています。
このようにして、回生ブレーキの安定したブレーキ力が保たれているのです。
2003/8/1